今日は何人も珍しい人に出会った。
出会いと言うのは連鎖するのであろうか?

オレはいつもの行き付けの店Lのスポーツバーコーナーで複数の旧友と再会した後、いつもの通り知り合いのオンナに挨拶しながら店内を徘徊していた....

一通り廻りつくしてスポーツバーでくつろいでいると知り合いのオンナがツーと寄ってきてオレに抱きついてきた.....。

何かと思い彼女の視線を辿っていくと、少し離れた所からさっきまでこのオンナの横に居た男がじーっとこちらの様子を伺っているのだ。

男は五十中ごろだろうか?日本人か韓国人で、スラックスにポロシャツ、そして何だかわからないが小ぶりなバックを肩から下げて通路に突っ立っていた。

オレはストーカー紛いに店内を追い掛け回されているのか...と彼女をそのままにして旧友と話しをしていると、いつの間にかその男は隣まで来て旧友に何か話しかけるではないか...

オレは男に注意を向けてみると、男は勝手に自己紹介を始めた。イキナリカバンから英語標記の名刺を取り出し、自分は韓国人だと名乗ってきた。

事実かどうかは別として、名刺にはセキュリティという文字があったので、韓国の保険会社か何かだろう。男の肩書きはバイスプレジデントと書いてあった...

それから話しを良く聞いてみると、どうもオレの所に駆け込んできたオンナの友達がその男の彼女らしく、しかも男はその彼女に騙された挙句、金を騙し取られ、その行方を捜す為、オンナをつけ回していたようである。

オンナはオレの影に隠れながら、男からオレが貰った名刺を、判らないように取り上げると、後ろ手に丸めて捨て去った事から見ても、あながち男の妄想でもなさそうだった....

男はオレに、どこか地方の子汚い部屋で撮られた彼女とその家族との写真を見せ、2年付き合った挙句60万ペソを取られた...と涙目になりながら訴えて来た...

ま、そういわれても困るのはこっちである。オレは一応、相当な数の日本人もピーナに金を取られて大変な目にあってるんだよ。ザッツフィリピンさ!と言ってはみたが、彼はより真剣な顔になり、それを外国人に教えなきゃならないんだよ。と熱く語りかけてくるのだった。

オレはこの手の話しはウンザリだったが、韓国オヤジは自分がどうヤラレタのか細かく説明しないと納得がいかないらしい。散々ありきたりの鴨話しを聞かされウンザリしたオレは、後はtexしてくれ...と自分の携帯番号を渡し、早々に退散する事にした....

携帯番号を教えたのは、何となく続きが聞きたいような気もしたからだろう.....

しかし、典型的な葱鴨オヤジは日本ばかりではないのだ...彼女だというオンナの写真はお世辞にもカワイイとは言い難かった...

こんなオンナに騙された挙句、その呪縛から解き放たれずにLなんかを彷徨っている姿は哀れ以外の何者でも無い.....

オレは彼の中に葱鴨等というカワイらしいものでは無く、もっとドロドロとした晩年男のカルマを見たような気がした.....

LAの夜に響き渡る、狂い咲きオヤジの狂想曲.......

こうして、オレは狂気と退廃のアンダーグラウンドLAにふさわしい夜の一時を過ごしたのだった.....