今までのタクシーで記憶に残っているのは、やはり睡眠薬強盗鴨タクシーだろうか?
過去に記憶に残っているだけで三回程、運転手は別々なものの、殆ど同じストーリーを話された。
運転手は皆人の良さそうなオヤジだった。間違っても睡眠薬強盗とは思えない風貌と話し方だ。

彼らの話しはオレの国籍を聞く所から始まる。他の運転手も皆「何処から来た?」と聞いて来る事が多いので、この事自体はこれといって特別視するようなものでは無い。

彼らの話しによると、彼らの住まいの近所に、日本に行った事の有る非常に優しい女性が居るらしい。彼女は日本に行った事があるので、日本人に優しい.........彼女も日本を懐かしがっているので、たまに彼らの客の日本人を連れてくと、料理等のもてなしをしてくれると言う。ドライバー達もいつも世話になっていて、うまいメシを食わしてもらってる。彼女はいつも日本の話しをしたがっているから、今時間があるようだったら是非行ってみないか?

ま、こんなような内容だ。もちろん三人共多少の違いはあるのだが、皆話しの刺を旨く抜いた話し方をして来た。

例えば、「彼女はそんなに美人じゃ無いよ。でもね、とても優しいんだよ」「いつもうまいメシを食わしてくれるんだよ。オレも今腹減ってるし、ここから近いから行ってみないか?」「そんなにリッチなメシじゃないよ。でも料理上手な彼女の手作りだから旨いよ」という具合だ。

ドライバーそのものからは危険な匂いはまったくしない所も特徴か?

もちろん過去に三回共オレはドライバーの薦める場所に行って無い訳だから、それが犯罪につながっているという確証は何も無い。

しかし、日本大使館の危険情報等でいつも謳われている睡眠薬強盗の殆どは民家に言葉巧みに連れ込まれ、飲み物やメシに強力睡眠薬を混入され、丸裸で放り出されるというものだ。

新聞等による事件の記事だけでは、何故そのような所へ行って飲み食いをする羽目になったのかは書いて無いが、一人では後で思い出せないような場所に行き飲み食いする訳は無い。誰かに連れて行かれた事は明白な訳だ。

それでは誰に連れてかれたのか?
後で足が付かないという事は行きずりの人間な訳だ。旅行者がノコノコとついて行く可能性のある行きずりの人間とは、タクシードライバーかポン引きモドキではないだろうかと推測出来る。

過去に会ったその三人のドライバーは、見るからに人の良さそうなオヤジであった。あの風貌や物腰から犯罪を連想するのは難しいだろう。しかし、だからこそヒトクセあるのかもしれない..............